9-2. 新しい組換えDNA構築法
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近年、制限酵素やDNAリガーゼに頼らない新しい組換えDNA作製法が用いられ始めている
1) TOPOクローニング
主に、3'末端にAが付加されるPCR産物のクローニングで使われる
DNA断片の結合の際、特異的配列に結合してDNA切断と結合の両方の活性を発揮するトポイソメラーゼI(TOPO)を使う方法で、メーカーから3'末端にTOPOが結合したTOPO活性化ベクターを入手できる
ベクターにインサートDNAを加えると、その5'末端がベクターの3'末端と結合し、TOPOはDNAから離れる
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2) LIC法
ライゲーション非依存クローニング法(ligation-independent cloning:LIC法)
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PCR法によるDNAの増幅とT4DNAポリメラーゼの3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を利用する方法
PCRプライマーに特定の塩基を加えず、ヌクレアーゼ反応に特定のヌクレオチドを加えて配列の定まった粘着末端をつくる
アニール部分が長いためライゲーションが不要で、そのまま大腸菌に形質転換できる
細胞内でライゲーションする
タンパク質産生系プラスミドにcDNAを組込ませて自前タンパク質を発現させるなどの煩雑な操作で威力を発揮する
3) ゲートウェイクローニング
主にcDNA中のコード領域を発現ベクターにクローニングするなどの煩雑な操作で使用される方法で、λファージの組換え酵素を使ったin vitro反応に基づく
反応は組込み標的配列をプライマーにしたPCRによるDNA合成、組込み反応におるドナーベクターへのPCR産物の挿入(BP反応)、組み込み反応によるエントリークローンから発現ベクター(ディスティネーションベクター)へのインサートの移し替え(LR反応)からなる
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BP反応ではλファージがゲノムに組込まれる場合のattBとattP配列が利用され、酵素はBPクロナーゼ(ファージ由来のインテグラーゼと組込み宿主因子(IHF)を含む)が使われる
LR反応は、エントリークローンにできたattLとディスティネーションベクターに用意されたattRとの間でDNA組換え反応が起こるようにデザインされ、酵素はLRクロナーゼ(ファージ由来のインテグラーゼとエクシジョナーゼ、そしてIHFを含む)が使われる
BP反応後に一度大腸菌でDNAを増やすこともできる
最後に完成したクローンで大腸菌を形質転換し、ディスティネーションベクターに入ったマーカー遺伝子をもとに目的クローンを得る
4) in vitro反応だけで組換え体をつくる汎用性の高い方法
上記の方法は末端付着配列に制限があり、また数段の反応を経なければクローンが得られないという欠点があった
しかし最近では、自由な末端配列をもつDNA断片でも、複数の酵素混合液中でいくつかの反応を連続的に行わせ、一気に組換えを起こさせるように工夫されたin vitroクローニングのための便利な製品が各種メーカーから出されている
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memo: シームレスクローニング
相同性のある配列間で起こる酵素反応や組換え反応を利用してPCR断片をベクターに挿入するタイプのクローニング
組換えでのつなぎ目が残らないためにシームレスと呼ばれる
上記のin vitroでの組換え体作製反応や、下記のiVECはその典型的な例
5) iVEC(in Vivo E. coli Cloning)
上記のようなin vitroの酵素反応を細胞内で行わせる方法
基本的には組換えに必要なλファージ由来の2種類の酵素を発現している大腸菌にDNAを入れて組換え反応を行わせる
RecE(Red α)
5'→3'エキソヌクレアーゼでDNAに一本鎖末端をつくる
RecT(Red β)
一本鎖部分に結合して相同な2本の鎖をアニールさせる
DNAと大腸菌だけを用意すればクローニングができるこのiVECは、究極のシンプルクローニングともいえる方法
方法の概要
アーム配列を付加されたプライマーによるPCRでDNAを増やし、2個のアーム配列をもつクローニングベクターを大腸菌に導入する
そこでプラスミドに乗っている2種類のRec遺伝子の発現を誘導することにより細胞内で相同組換えを起こさせ、目的DNA断片をベクターに挿入する
このような原理に基づく方法に、Gene Bridges社の特許によるRed/ET組換え法がある
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特殊な大腸菌株を使用する
上記方法を改良したものに、sbc23変異によって2種類のRec遺伝子が過剰発現している菌株(AQ3625株)を使用する方法がある
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この菌株にさらに変異を導入して形質転換効率を上げたME9783という菌株もある
国立遺伝学研究所から入手できる
クローニング効率がよく、10~30塩基長の末端配列を標的とするだけで十分に良好な結果が得られ、3分子による同時組換え体作製も効率的に行える